1974年(昭和49年)にTBSで放送された向田邦子原作・脚本、久世光彦プロデュースの『寺内貫太郎一家』は、谷中が舞台のホームコメディ。
40代以上の人ならほぼリアルタイムで見ていたであろう、昭和という時代を生きる人々の姿と、下町の雰囲気をたっぷり堪能できる作品だ。
三代続く老舗の石屋の主人・寺内貫太郎(小林亜星)は、谷中霊園の入り口近くに店を構えている。
昔堅気で気の短い貫太郎は、100キロの巨体を揺らしながら、事あるごとに“ちゃぶ台”をひっくり返し、息子の周平(西城秀樹)と取っ組み合いの喧嘩をする。
そんな貫太郎を甲斐甲斐しく支えるのが、妻の里子(加藤治子)。
姑・きん(悠木千帆、後の樹木希林)の意地の悪い言動もサラリとかわし、墓石の下敷きになって片足が不自由になった娘の静江(梶芽衣子)の将来を思い、浪人中の周平を励ましている。
貫太郎と里子は、すでに30年前の当時から「今は滅多に見られなくなった、古き良き時代のガンコ親父と献身的な妻」で理想的な夫婦と言われていた。
家族の間にほぼプライバシーはなく、子どもたちの性や恋愛、結婚問題についても、家族みんなで話し合おうという姿勢は、今ではちょっと信じがたい徹底ぶり。
老い、孤独、貧困、戦争といった重いテーマもからませ、ストーリーに厚みをもたせている。
寺内一家を取り巻く隣人たちも、若き日の横尾忠則、藤竜也、吉行和子、由利徹など、豪華な顔ぶれ。
居酒屋「霧雨」の女主人・お涼を演じた篠ひろ子(当時は篠ヒロコ)の匂い立つような美しさよ。
私は、石屋の職人「イワさん」を演じた伴淳三郎の大ファンになってしまった。
沢田研二の大判ポスターの前で「ジュリ~」と言いながら体をくねらす悠木千帆の姿もなつかしい。
屋根の上で、西城秀樹と浅田美代子が白いギターを持って歌う「しあわせの一番星」も時代を感じさせてくれる。
この後は、『寺内貫太郎一家2』もひかえている。
しばらくしたら、シリーズ第2作目も見てみよう。
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